希少糖(単糖)をテーマとして用いた新しい科学教育システムの研究連携と先端理数教育研究会
全国スーパーサイエンスハイスクール(SSH)コンソーシアム
日時:2008年7月25日~27日で研修会を行いました。
第2回希少糖甲子園はこちら
研修会の趣旨
理科教育における現状は、急速に発展しているバイオテクノロジーの研究開発に対応した教育を進めることが求められています。生命においては、情報はDNAからタンパク質へと流れ、タンパク質が生命現象の実行を担うことが確定し、これを大前提とした最新のバイオ研究が急速に進展しています。このような科学の進展に伴って、第一にDNA、そして次いでタンパク質を用いた理科教育が進められています。髪の毛一本や耳垢からでもDNAを分析できるように、分析技術も合成技術についても急速に進歩していることを踏まえた教育が求められており、現在この分野における教育は全国的に進んでいます。
分子レベルの研究開発では、量から見ると、マイクロ、ピコなどの非常に少量の研究材料を用いた情報科学的な研究開発や教材開発が主に進められているように見受けられます。これは大学を含めて、バイオの研究自体がミクロの研究が主流になったという大きな流れを反映していると考えられます。しかし、遺伝子・タンパク質の研究からは解明できないバイオの研究も存在します。たとえば、野山の動植物の観察、昆虫の生態研究など挙げられますが、これらの研究もまた急速に進んでいます。遺伝子・タンパク質を扱う生物学を「ミクロ世界のバイオ」、動植物などの生物個体生物の生態系を扱う生物学を「マクロ世界のバイオ」と呼ぶことにしましょう。両方のバイオを学ぶことが重要であることは言うまでもないことです。
古くから「木をみて森を見ない」ことがよく言われますが、バイオの世界においてはその傾向がより大きい研究分野であると思われます。分子レベルの現象と、生物個体や自然界との関連、地球環境や人の生活との関連が遊離して取り扱われていないかという反省があります。この観点から、本研究開発においては、ミクロ世界とマクロ世界とを「糖」という素材を用いて結びつけることを大きな目標としています。
太陽光線のエネルギーは植物によって「糖」という化合物の形で蓄えられ、この「糖」は、バイオの力で数多くの食品へと転換して利用されています。これらのエネルギーの流れを明確に意識した、生物・化学教育を実施することによって、現代の生物科学の現状と、その問題点を適切な形で教育できることを期待しています。
今回の研修のコンセプトです。
「単糖(希少糖)からバイオを解剖する」
「身の回りから、教材開発の材料の発見をめざす」
「糖」を研究の素材とする
「糖」を実験研究の素材として用いることの特徴
➀糖は身近に存在し、バイオが実生活に大きく貢献していることを実感できること。
②実験に遺伝子やタンパク質の実験と比べ、必ずしも高度な機器が必須ではないこと。
③各地域に特有の伝統的産業が、現代科学と伝統との関連を認識できる素材であること。
④多岐にわたる研究テーマにより教員間のネットワークを組織できる可能性があること。
本研究開発においては、バイオにおける「ミクロ世界」と「マクロ世界」を「糖」という素材を用いて結びつけることで、生命世界の全体像を教育することを課題としています。
<バイオセンサーとバイオリアクターが基本戦略>
本研究開発でのねらい
「教員連携」と「研究連携」を効果的に融合したプログラムの実施により、
➀現代の研究をまず教員が理解し、教育研究現場に反映する。
②研修を受けた教員を通して、多くの生徒への広がりを計画する。
③生徒の自主的な発想を引き出せるような、環境をめざす。
④教員間の連携が競争ばかりでなく、協調を目的とした組織づくり。